以前は、憧れの職業として人気の高い保育士のお仕事でしたが、昨今では待機児童問題と共に慢性的かつ深刻な保育士不足問題もニュースで取り上げられるようになりました。
加えて、法定労働時間を超える長時間勤務や残業代の未払いなどの過酷な労働環境を強いるブラック保育園の存在も耳にするようになり、保育士を取り巻く問題が後を絶ちません。
更なるキャリアアップや出産後のブランクを経て転職をする際、選びに選んだ先が心身をボロボロにしてしまうブラック保育園だった!なんて状況は避けたいですよね。
そこでこの記事では、転職を考えている保育士が職場選びで失敗しないように、ブラック保育園の特徴や見極めポイントをご紹介します。
1.保育業界最大手の労基法違反が発覚!サービス残業の未払いで行政指導
2016年9月、保育業界最大手の株式会社日本保育サービスが運営する横浜市の保育園が労働基準法に違反しているとして、横浜南労働基準監督署より是正勧告が出されたことが、介護・保育ユニオン(介護・保育・福祉業界で働く人の労働相談の受付、職場改善のサポートを行う労働組合)のブログで報告されました。
参考:日本保育サービスに残業代未払いで行政指導
同ブログで紹介された「横浜市の保育園で働いていた女性」の話では、
・残業時間は保育園が独自に決めたルールでカウント
・開閉園作業、会議、行事の準備はサービス残業
・休憩時間にも事務作業をしていた
と話しており、このような環境で仕事を続けているうちに体調を崩し休職。
ついには退職せざるを得なかったということです。日本保育サービスはこの是正勧告を受け、一部の未払い賃金をすでに支払っているとのことでした。
労働基準法は、労働者が安心して働くことができるために最低限守られるべき法律であり、それを下回った社内ルールなどあってはならないことなのです。
2.ブラック保育園・幼稚園とは
ブラック企業やブラックバイトの過酷な労働環境が問題視されていますが、最近は「ブラック保育園」なる言葉まで派生してきました。
ブラック保育園という言葉の定義自体はありませんが、労働基準法を無視した過酷な長時間労働、サービス残業やみなし残業を超えた分の賃金未払いは、働いている保育士の権利を無視したやり方です。
激務が連日続いていたのでは心身ともに休まらず、保育の質や危機管理能力も下がってきてしまい、やがては子どもたちに影響が出てしまいます。
また、閉塞的で女性が圧倒的に多い保育園の中では、いじめや悪口といった、精神的に追い詰められやすい環境にもなりやすく、このような劣悪な労働条件・環境で働く保育士が疲労困憊し、精神的にも追い詰められていく保育園はブラック保育園と言わざるを得ないでしょう。
3.ブラック保育園・幼稚園の特徴
1)労働基準法に違反するサービス残業
季節的な行事や早朝・延長保育などで業務量が増えたり人員が不足したりすると、指定の時間内に仕事が終わらず法定労働時間(1週間に40時間・1日8時間)を超えてしまうことがあります。
そこで、保育園などではあらかじめ定めた一定期間内で1週間の「平均労働時間」が40時間になるよう調整することができる「変形労働時間制」を採用しているところがほとんどです。
この制度は、行事のない月には勤務時間を減らし、行事が多く、前準備などで業務が増える時期に勤務時間を増やし、平均労働時間が40時間になるように調整することができる制度です。40時間を超えた場合には、その分の残業代は支給されなければいけません。
保育士側が気を付けておきたいことは、帰り間際に子供が「おもらししちゃった!」と急な対応を迫られた時など、ついついサービス残業をしてしまいがちです。たとえ1分であっても、残業した場合はその分の残業代が支給されなければならないのです。
2)いじめ
保育園は、まだまだ女性が圧倒的に多い職場です。女同士気が合えば、協力態勢をとって役割分担をしながら明るく楽しい職場づくりも可能ですが、一方で、女同士特有の嫉妬やプライドのぶつかり合いから、悪口や陰口を言い合う、派閥などを作っている保育園も実際に存在します。
中には、園長自らが特定の保育士をひいきしている場合もあるので要注意です。
3)職員の入れ替わりが激しい
職員の入退職が激しい場合、すぐに辞めたくなる・辞めざるを得ない理由がそこにあるということです。
常に求人広告を出している場合には、職員が次々に退職しているにもかかわらずその原因が解消されておらず、常に人手が足りていないことがあります。
職員の入れ替わりの激しさから保育の質も上がりにくく、人手不足による激務が待っていることでしょう。
4.ブラック保育園に転職しないための4つのチェック項目
1)子どもの人数に対しての保育者数
保育園では、子どもの年齢や人数によって必要な保育士の数が決められています。
しかし、ブラック保育園ではギリギリの人数で何とか運営していることがよくあります。
「決められた人数ピッタリだから大丈夫!」ではありません。ある程度人員に余裕がなければ体調不良時にも休むことすらできず、誰かが休めば他の職員にしわ寄せがきてしまうのです。
また、人員ギリギリではお互いに行事前の制作物を手伝う余裕もなく、持ち帰りの仕事が山積みとなることも目に見えています。前述した「職員の入れ替わりが激しい」ことも併せてチェックしたいところです。
2)働いている職員の言葉使いや表情
ブラック保育園で働いている場合、疲労やストレスのあまり職員の表情が乏しくなっていたり、子ども達に対しての言葉使いが乱暴・そっけなくなってしまいます。
子どもの話し掛けにも共感できない・受け入れられないほどでは、子ども達の心身の健やかな成長に影響が出てしまいかねません。
逆に、保育士がイキイキとした表情でテキパキと動いている、他の職員とも笑顔で言葉を交わしコミュニケーションが取れているのであれば安心です。
3)整理整頓がなされているか
保育園内を見渡して、整理整頓がなされていなければ要注意です。また、棚などの子どもの目線より高いところに絵本やおもちゃなどが山積みになっている場合も同様です。
忙しすぎて片付ける余裕がなかったり、地震などで落下する危険があるものを放置=危機管理ができておらず、保育する環境が整っていないことがわかります。
4)家族経営の保育園は要注意
経営者が父親で園長が息子、または園長が夫で副園長が妻など、家族で保育園を運営している場合は、少し気を付けた方が良いかもしれません。
子どもを保育する保育士は指定の保育士養成施設を卒業するか、国家試験である保育士試験に合格しなければなりませんが、経営者や園長(施設長)は保育士資格を持っていなくても運営することに問題はありません。
もちろん、家族経営でもしっかりとした理念を持ち、保育への情熱や理解のある方も多くいらっしゃるので一概には言えませんが、なぁなぁになりやすい環境下で身内同士の甘えが出たり、社会経験が少ないままに園長へと就任すると、保育現場の状況を理解しないままにパワハラ・モラハラが生じやすいと言えるでしょう。
5.転職サイトを活用し、見学や内部情報を確認する
多くの方はハローワークや求人情報誌、フリーペーパーで転職情報を集めることが多いのですが、希望に見合う条件の求人が少なかったり、求人情報からだけではブラック保育園かどうか判断することは難しいものです。
最近では、保育士に特化した転職サイトも増えてきており、取扱い求人数の多さや全国対応しているところもあるため、引っ越し先での転職を考えている方やブランクを経て再就職を目指す方にも人気があります。
1)保育士の転職サイトを利用するメリット
- 無料で利用できる。
- 多数の求人から、勤務地・勤務時間・給与・保育園の規模など、自分の希望に合った職場を紹介してもらえる。
- 中立の立場に立ったコーディネーターが、さまざまなサポートをしてくれる。
- 希望すれば面接前に保育園の事前見学依頼をしてもらえるため、園の雰囲気や内部環境を知ることができる。
- 給与や休日に関する質問など、自分からは聞きにくい内容もコーディネーターを介して知ることができる。
このように、自分で求人情報を見つけて転職活動を行うよりも、細かい情報収集、面接日程の調整などの手間が省けるため、良い求人に出会うまでは閲覧のみという利用方法や在職期間中の転職活動も可能です。
多くの転職希望保育士のサポートを重ねたコーディネーターは、保育士が抱きやすい悩みや相談にも的確なアドバイスをすることができるため、一人で転職活動するよりも心強い存在です。転職サイトを活用することで、より効率的に自分の希望に合った保育園との出会いが期待できます。
まとめ:保育士としてあなたらしく働く!子どもの健やかな成長を援助できる環境へ
実際に起こった事例やブラック保育園の特徴、転職の際の見極めポイント、そして最後に転職サイトについてご紹介しましたが、いかがでしたか?
保育士は人格形成の土台を作る乳幼児期に、専門的知識と技術を持って子ども達と関わり、発達を援助していくという素敵な仕事です。
転職しようか悩んでいる方も、すでに転職先を探している方も、記事内でお伝えしたことを念頭に置いきつつ、あなたらしく働けるような、そして未来の日本を担う子どもたちが心身共に健やかに成長していけるような保育園に出会えることを願っています。
記事のまとめ
- 労働基準法は労働者が安心して働くために最低限守られるべき法律です!
- 劣悪な労働条件・過酷な労働環境を強いる保育園はブラック保育園です!
- ブラック保育園を見極めよう!
1)サービス残業は1分からでも労働基準法違反
2)女性の多い職場のあるある!いじめや派閥
3)職員の入れ替わりが激しいのには理由がある - ブラック保育園を避けるために、チェックすべきはココ!
1)職員の人数は大丈夫?ピッタリ以下は要注意
2)職員の言葉使いや表情は保育園内部を写す鏡
3)整理整頓で安全管理に対する考え方が見えてくる - パワハラ・モラハラの温床!?甘えの出やすい身内経営に要注意
- 転職サイトはメリット多し!コーディネーターを味方につけよう
- 見つけよう!あなたらしく働き、子ども達が健やかに成長できる保育園